共感
旅行は一人で行ってもつまらないと思う人間だ。
純粋に楽しむのが目的ならば、誰かと行くのが絶対だ。
そこで重要なのは共感である。
正直今まで一人旅行に行ったことも何回もあるが、ほとんど覚えていない。
思い出せと言われれば思い出せるが、そもそも一人で行っても共感する相手がいないから感情が動かない。
例えば一人で良い景色を見ても、へぇーきれいだなーくらいにしか思わない。
そして見終わった瞬間に見ていたことも忘れてしまう。
何年かすれば、そんなこともあったなーくらいのもんだろう。
でもそこに相手がいれば共感できる。
綺麗な景色を見て共感すれば、お互いの感情が繋がってずっと記憶に残り続ける。
そして何年経ってもその時の感情を思い出してしゃべることができる。
それは、記憶と感情が密接に結びついているからだ。
つまり、感情が動かなかった出来事なんて人はイチイチ覚えていないのだ。
楽しいといった感情を誰かと分かち合えば、その感情は記憶と密接に結びつくはずだ。
そう考えると『トラウマ』というのも実は同じ原理かもしれない。
嫌だった記憶や恥ずかしかった記憶、怖かった記憶はいつまでも憶えていて、ふとした時に思い出してあの頃のネガティブな気持ちに戻る人もいるはずだ。
なぜこんなにも記憶と感情が密接なのかと言えば、脳の感情を司る場所と記憶する場所が近くにあるからだとか、狩猟採集民族の頃からリスクヘッジとしてインプットされたからだとか、諸説あるが、そんなことはどうでもいい。
とにかく、楽しむならば共感が必要不可欠であると、そう思うのである。
それでも一人旅に行く人は、なにか別の目的を持った冒険者なのかなあと思う。
写真は2015年夏、台湾にて。